歯周病ってどんな病気?
歯周病は、日本の成人の過半数が感染しているとても身近な病気です。2001年には歯周病がギネス世界記録に認定され、「世界で最も蔓延している病気」と認定されました。この認定の際には、「全世界で最も蔓延している病気は歯周病である。地球上を見渡してもこの病気に冒されていない人間は数えるほどしかいない」と記されています。
歯周病の主な原因は、お口の中にいる細菌(歯周病菌)です。これらの細菌は、歯の表面に付着したプラーク(歯垢)の中で増殖し、毒素を出します。この毒素が歯茎に炎症を引き起こし、徐々に歯を支える骨(歯槽骨)を溶かしていく病気が歯周病です。進行には、不十分な歯磨きによるプラークの蓄積だけでなく、喫煙、糖尿病、ストレス、遺伝なども深く関わっています。また、歯並びの悪さや合わない詰め物・被せ物も、プラークが溜まりやすい環境を作り、歯周病を悪化させる要因となります。これらの原因が複雑に絡み合って進行するのが歯周病です。毎日の丁寧なケアと、歯科医院での定期的なチェックが、歯周病の予防と早期発見には不可欠です。
歯周病が進行すると

ー公益社団法人8020推進財団(2018) 第2回永久歯の抜歯原因調査
歯周病が進行すると、以下のような症状や問題が現れます。
- 口の中がネバネバする
- 歯ぐきが腫れたり出血したりする
- 歯が抜ける(歯が抜ける原因の第1位は歯周病です)
- 歯ぐきが痩せて歯が長く見える
- すきっ歯になる
それぞれ最初は気にならない程度の問題です。そのため「もう少し様子を見る」が長くなり、歯医者に行く頃にはかなり進行が進んでしまっている場合もあります。歯周病で溶けてしまった歯は元には戻りません。「歯周病かな」と思ったら、迷う前に歯科に罹ることが大切です。
歯周病の進行について
歯周病は段階的に進行する病気です
歯周病は、ゆっくりと進行していく病気で、その状態によっていくつかの段階に分けられます。
【歯肉炎】(初期)

歯周病の最初の段階です。歯茎が腫れたり、歯磨きの際に出血したりすることがありますが、痛みはほとんどありません。この段階であれば、丁寧な歯磨きや歯科医院でのクリーニングで改善が見込めます。
【軽度歯周炎】

炎症が歯茎だけでなく、歯を支える骨(歯槽骨)の一部にまで広がった状態です。歯周ポケット(歯と歯茎の間の溝)が深くなり始め、口臭が気になることもあります。適切な治療とセルフケアを行うことで、進行を食い止められる可能性があります。
【中等度歯周炎】

歯槽骨の破壊がさらに進み、歯周ポケットがより深くなります。歯茎が下がり、歯がグラグラし始めることもあります。膿が出たり、口臭が強くなったりすることも。専門的な治療が必要となり、場合によっては外科的な処置も検討されます。
【重度歯周炎】(末期)

歯槽骨が大きく失われ、歯が著しくグラグラするようになります。噛むことが困難になったり、歯が自然に抜け落ちてしまうこともあります。治療は非常に難しく、歯を残すことが難しい場合もあります。
歯周病は、自覚症状が出にくいまま進行することが多いため、早期発見と早期治療が非常に重要です。定期的な歯科検診と適切なセルフケアを心がけましょう。気になる症状があれば、迷わず歯科医院にご相談ください。
歯周病の治療について
歯周病から大切な歯を守るために
段階に応じた治療法
歯周病は、お口の中の細菌が引き起こす炎症性疾患で、進行すると歯を支える骨(歯槽骨)が溶けてしまい、最終的には歯が抜け落ちてしまうこともある怖い病気です。しかし、適切な治療を行うことで、進行を食い止め、大切な歯を守ることができます。歯周病の治療は、その進行度合いによって段階的に行われます。
01
【初期治療】
まずは徹底的なクリーニングから
歯周病治療の第一歩であり、最も重要なのが初期治療です。これは、お口の中に潜む歯周病の原因菌を徹底的に除去し、炎症を鎮めるための基礎となる治療です。たとえ歯周病が進行して外科的な処置が必要になったとしても、この初期治療がしっかりと行われていなければ、その後の治療効果も十分に期待できません。
治療の中心となるのは、プロフェッショナルクリーニングです。歯科衛生士が、専用の器具を用いて、患者様ご自身ではなかなか取り除くことのできない、歯の表面や歯周ポケット(歯と歯茎の間の溝)にこびり付いたプラーク(歯垢)や、硬く石灰化した歯石を徹底的に除去します。初期治療は、歯茎が急激に下がったり、全体がしみたりしづらくさせるため、数回に分けて行うことが一般的です。
プロフェッショナルクリーニング
- スケーリング
歯の表面に付着した歯石を丁寧に剥がし取ります。
- ルートプレーニング
細菌が再び付着しにくい清潔な歯面を作り出すことができます。具体的に言いますと、歯周ポケット内部の歯根面に付着したプラークや歯石、そして細菌が出す毒素によって汚染されたセメント質などを滑らかにするという処置を行います。
- TBI(プロのブラッシングレクチャー)
このプロフェッショナルクリーニングの効果を最大限に引き出すためには、患者様ご自身の毎日の丁寧な歯磨きが不可欠です。歯科衛生士は、患者様一人ひとりのお口の状態に合わせた正しい歯磨きの方法や歯ブラシの選び方、歯の隅々まで磨くコツ、歯周ポケットに毛先を当てる角度などを具体的にアドバイスします。また、歯ブラシだけでは届きにくい歯と歯の間や、奥歯の裏側などの清掃には、歯間ブラシやデンタルフロスなどの補助清掃器具の使用が非常に有効です。これらの適切な使用方法についても、歯科衛生士が丁寧にレクチャーさせていただきます。
02
【歯周外科治療】
さらに進行した場合の外科的な処置
歯周病治療は、プラークと歯石の除去を行うことであり、歯周基本治療と歯周外科治療に分類されます。初期治療では歯周病の進行を食い止めることができず、歯周ポケットが深くなり歯槽骨が破壊される場合は、外科的治療が必要になります。
歯科外科治療
歯周病の治療はもちろんの事、歯の周りの組織への外科処置全てを指しています。

歯周基本治療では対応できないような、歯周組織(歯肉や骨など)の破壊が進んだ深い歯周ポケットにアプローチするには、歯周外科治療が必要です。スケーリングやSRPを行っても歯周病が改善しない場合も、歯周外科治療の対象となります。歯周外科治療には多くの種類があり、目的も様々ですが、&DENTAL谷町4丁目歯科・矯正歯科では多岐にわたる歯周外科処置を提供しています。
歯周外科治療の種類
フラップ手術(深い歯周ポケットにたまった歯石の除去)
歯周病治療の一環として、歯と歯茎の奥深くに付着した歯石を除去するために歯肉剥離掻爬術が行われます。通常の器具では除去できない歯石を、歯茎を切開し、めくり上げることで、直接目視しながら取り除きます。処置後は歯茎を元に戻し、糸で縫合します。歯周病の原因となる歯石を徹底的に除去することで、歯周病の改善を目指します。ただし、処置後に歯茎がやや下がることがあります。




歯周組織再生療法
歯周病が進行し、溶けてしまった骨を特殊な材料で再生する治療法です。失われた骨を回復させることができるため、重度の歯周病に効果的です。まずFlap opeを行い、歯石を除去することが前提となります。デメリットとして、適応できる骨欠損のパターンが決まっていること、骨が再生する確率が100%ではないことが挙げられます。失われた歯槽骨や歯周組織を再生させるための治療法です。特殊な膜(メンブレン)や薬剤を用いて、組織の再生を促します。




03
【メンテナンス】
治療後の良好な状態を維持するために
歯周病治療のゴールは良い状態の維持!生涯にわたるメンテナンスの重要性
初期治療や外科治療によって歯周病の状態が改善した後、最も重要なのはその良好な状態を生涯にわたって維持していくことです。これが、歯周病治療の最終目標であり、真の意味での「治癒」と言えるでしょう。そのためには、患者様ご自身による日々の適切なセルフケアと、歯科医院での定期的なメンテナンスが不可欠となります。
メンテナンスの3つの主な目的
プラーク・歯石の再付着の
早期発見と除去
どんなに丁寧に歯磨きをしても、時間の経過とともにプラークは再び付着し、やがて歯石へと変化していきます。特に、過去に歯周病が進行していた部位や、歯並びが複雑な箇所は、細菌が繁殖しやすい環境にあります。
定期的なメンテナンスでは、歯科衛生士が専門的な技術と器具を用いて、患者様ご自身では完全に除去できないプラークや歯石を徹底的に除去します。これにより、歯周病の再発や新たな進行を未然に防ぎます。
お口の状態の変化の
モニタリング
メンテナンス時には、歯周ポケットの深さ、歯茎の状態、出血の有無、歯のぐらつきなどを丁寧にチェックします。過去のデータと比較することで、わずかな変化も見逃さずに早期に対応することが可能です。
もし、再発の兆候が見られた場合には、早期に適切な処置を行うことで、重症化を防ぐことができます。
患者様へのモチベーション維持と
セルフケアの再指導
歯周病の管理は、患者様ご自身の毎日のセルフケアが非常に重要です。しかし、長期間にわたるセルフケアは、意欲の維持が難しいこともあります。メンテナンス時には、歯科衛生士が患者様のお口の状態を確認しながら、適切な歯磨きの方法や補助清掃器具の使用方法を再確認し、必要に応じて改善点などをアドバイスいたします。
また、患者様の頑張りを褒め、意欲の維持をサポートすることも重要な役割です。
メンテナンスの期間は、患者様一人ひとりのお口の状態や歯周病の進行度合い、リスク要因などによって異なります。一般的には、1〜3ヶ月に一度のペースで定期的な受診をおすすめしています。メンテナンスを怠ってしまうと、せっかく改善した歯周病が再び悪化し、最悪の場合、再び歯を失ってしまう可能性もあります。「もう痛くないから大丈夫」と自己判断せずに、歯科医師や歯科衛生士の指示に従い、継続的なメンテナンスを受けることが、健康な歯を長く維持するための最も重要な鍵となります。
当院では、患者様が生涯にわたってご自身の歯で快適な生活を送れるよう、丁寧なメンテナンスを通じてサポートさせていただきます。治療が終わった後も、末永くお付き合いさせていただけますと幸いです。
よくあるご質問
-
歯周病は治りますか?
適切な治療とケアによって、歯周病の進行を止めたり、症状を改善させたりすることは可能です。しかし、完全に元の健康な状態に戻すことは難しい場合もあります。治療の目標は、歯周病の進行を抑制し、歯を支える骨や歯肉の破壊を防ぎ、患者さん自身が良好な口腔内環境を維持できるようにすることです。そのためには、歯科医院での専門的な治療と、ご自宅での丁寧な歯磨きやケアが不可欠です。諦めずに一緒に治療に取り組みましょう。
-
年齢が若くても歯周病になることはありますか?
はい、歯磨きが不十分だと、むし歯だけでなく歯周病になる可能性も高くなります。歯周病はゆっくりと進行するため、若い頃は自覚症状がなくても、気付いた時には重症化している場合があります。年齢に関係なく、毎日の歯磨きと定期的な歯科検診で、歯周病を予防することが大切です。
-
日本人の80%が歯周病というのは本当ですか?
厚生労働省の情報提供サイトでも指摘されているように、過去の歯科疾患実態調査において「歯肉出血・歯石・歯周ポケットのいずれかが認められた場合」を歯周病と判断されていたため、歯周病罹患者の割合は実際よりも高く示されています。歯石が付着しているだけでは歯周病と診断されるわけではありませんが、歯石はプラークの付着を助長し、歯周病へと進行するリスクを高める要因となります。したがって、日々の定期的な歯科検診を通じて、歯周病の予防と早期発見に努めることが重要です。「自分も歯周病になる可能性がある」という意識を持つことが、適切な行動につながります。
-
妊娠中に歯周病治療を受けても大丈夫ですか?
妊娠中でも、安定期であれば基本的に歯周病治療を受けることは可能です。むしろ、妊娠中はホルモンバランスの変化などにより歯周病が悪化しやすい傾向があるため、適切な治療とケアが重要となります。
-
口臭が気になっているのですが、歯周病が原因でしょうか?
口臭の原因は、口腔内、身体の疾患、食餌性、生理的口臭の4つが考えられますが、90%は口腔内に原因があります。口臭の原因となる代表的な疾患は歯周病ですが、むし歯や歯垢、舌苔など、他の口腔内の疾患が原因である可能性も十分考えられます。まずは一度ご相談ください。
-
歯磨き中に歯茎から出血があるのですが、痛みはありません。歯周病の可能性はありますか?
歯ぐきへの軽い刺激で出血する場合は、歯周病の可能性があります。健康な歯ぐきでは出血しないのが通常ですが、硬い歯ブラシや強いブラッシングによって傷がつき、出血する場合もあります。しかし、このような出血は一時的なものであり、繰り返すことはありません。出血が続くようでしたら、歯周病の可能性が高いので、早めに受診されることをおすすめします。